経営戦略の歴史を理解したい人は「経営戦略概論」を読もう。

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こんにちは、Shin(@Speedque01)です。経営戦略について、しっかりと体系立てて学びたいものの、古典をひとつずつ紐解いていくのは大変・・・と思われている方は少なくないでしょう。そんな方におすすめしたい本があります。


元マッキンゼーのベテランコンサルタント、波頭氏が書かれた「経営戦略概論」です。

波頭さんの本はどれもハズレなしです。過去に、コンサルタントとしての心構えについての本である「プロフェッショナル原論」も以下の記事で紹介していますので、よろしければお読みください。

「プロフェッショナル」を定義する5つの要件

「経営戦略概論」は、経営戦略の起源から近年の潮流までをわかりやすく解説する第一部と、第一部で紹介された各種の理論を複数の軸で纏め上げる第二部からなる本です。「簡単に読める」という類の本ではありませんが、骨太さとわかりやすさを両立させており、さすが波頭さんと感服せざるを得ない本です。

この記事では、特に第一部についてご紹介していきます。

経営学の誕生(1900年代~1950年代)

テイラーの科学的管理法とファヨールの経営管理論

経営学を誕生させた”経営学の父”と呼ばれる人物は一人ではなく、複数の功労者がいる。その中で最初に名前が挙がるのが、「科額的管理法」で知られるフレデリック・テイラーと、経営管理の機能的な枠組みを示したアンリ・ファヨールの二人である。

波頭さんは、丁寧に経営学の最初から解説をはじめてくれます。

最初に取り上げられるのが、テイラーとファヨールの二人。

テイラーは技師としてキャリアをスタートさせ、それまで経験に頼って行われていた生産プロセスを、データを用いて管理しようとした人です。工場での各工程と労働者の動きを観察し、定量的に生産性をはかりました。これは今でも行われている業務改善方法です。ただ、ぼくは、経営というよりも現場の効率改善という印象を受けました。

テイラーの手法を取り入れて成功した企業の具体例として、フォード社が挙げられています。ばらばらだった生産プロセスを、テイラーの科学的管理を用いて改善することで、世界初のベルトコンベアシステムが誕生したとのことでした。

もうひとりの経営学の父として紹介されているのがファヨールです。

彼もエンジニア出身で、最後には鉱山会社の社長となった人物です。社長になったときは経営が悪化しており、その再建をしていく中で経営についての理解を深めていったといわれています。ファヨールは、下記のように経営を体系立てました。

ファヨールによれば、企業の活動は大きく以下の六つに分類できるとしている。

  1. 技術に関すること:技術開発と生産・製造について
  2. 商業に関すること:販売、購買、営業、即ち物の売り買いについて
  3. 財務に関すること:資本の調達・投資の方法、及び資金の管理について
  4. 保全に関すること:人や物、生産設備など経営資源の維持・管理について
  5. 会計に関すること:企業の資金をどこに配分するかについて。具体的には人件費、原材料費、営業の費用など。
  6. 管理に関すること:組織をコントロールするためのルールと制度について。具体的には、事業系毛区、指揮命令系統、活動実態の測定・管理、部門間の調整など

この分類は企業の活動を包括的にかつすっきりまとめています。知らず知らずのうちに、このフレームを使って企業活動を論じていた経験が、みなさんにもあるのではないでしょうか。

テイラーが現場のプロセス改善を定量的に実施する方法を提示し、ファヨールが企業運営の視点を提供しました。この二人の研究がベースとなって、経営学は産声を上げたのです。

ホーソン実験とメイヨーの人間関係論

1930年前後に行われたある研究によって衝撃的な発見が飛び出し、「経営学」に一つの大きな視点が加わることになった。その研究とはエルトン・メイヨーによる「ホーソン実験」である。1927年から1932年までウェスタンエレクトリック社のホーソン工場で行われたメイヨーによる一連の研究は、人間の心理や生理といった特性を意識した経営管理こそが有効であるということを初めて示し、経営における”人の発見”として当時の経営学及び実際の企業経営に大きな衝撃を与えたのである。

今でこそ人のモチベーションややりがいの有無が生産性に大きく影響を与えることは当たり前に知られていますが、これを最初に証明したのがメイヨーだったのです。非常に偉大な人ですね。

実際の実験の詳細は長くなるので割愛しますが、非常に興味深いものです。

実験の結論について、メイヨーは下記3点にまとめています。

  1. 作業者の自由裁量が大きくなるほど仕事の満足度が向上する。
  2. 作業者同士のやり取りや協力の度合いが高いほど、グループの結束が強くなり、生産性も向上する。
  3. 仕事の満足度や生産性を左右するのは、物理的な作業条件よりも作業者の意欲、作業者間の協力・貢献という社会的・組織的条件である。

チームの生産性を最大化するためのTipsが書かれたビジネス書は現在でも多数出版されていますが、だいたいのことはこの結論に集約されるのでは、という気がします。それをこの時代に発見したメイヨーは偉大ですね。

バーナードによる組織論

その後ホーソン実験の研究に影響を受けたチェスター・バーナードが、”組織”というものの性質について研究を行い、これが組織論研究の出発点となった。

バーナードはまず、ホーソン実験で示された”人間集団としての組織”に注目し、今まで議論されてこなかった組織そのものを具体的に定義した。バーナードによれば、組織とは「意識的に調整された二人以上の人間の諸活動及び諸力の体系」であるとされる。要するに、複数の人間がお互いに協力しそれによって一人ひとりの力を結集して何らかの目的を成し遂げるための集団が「組織」だと明快に定義したのである。

テイラーは生産性、ファヨールは企業活動、メイヨーは人間の発見でしたが、バーナードは組織について研究を進めていきます。まず、「組織とは何か」と考え、みなが頷ける定義を示したのはさすがですね。

そして、彼が考えた「組織が有効に機能するための条件」も、今でも色あせないものになっています。

  1. 目標の共有:メンバー全員がその組織の目標を共有する必要がある。企業はそもそも何を達成するために存在するのかをメンバーが理解し、承認していなければならない。
  2. コミュニケーションのシステム:組織の上下・左右で情報のやり取りと意思決定を行うためのルールが整えられており、メンバー間において情報と意思決定の内容が共有されなければならない。
  3. インセンティブのシステム:組織のメンバーがその組織にとどまり、成果を上げるためには、メンバーの貢献以上に企業の提示する誘引が大きくなければならない。そのためには、モチベーションを維持するためのインセンティブシステムが設定されていなければならない。

企業、サークル、オンラインコミュニティ・・・今はいろいろなタイプの組織がありますが、活性化している組織にはこれら三要素がしっかりと組み込まれています。人が動く仕組みには、大きな変化は未だ起きていないということでしょうか。

これらの要素をそろえることは一見簡単に見えるかもしれませんが、実際にやってみるとかなり難しいものです。盲目的な組織運営をせず、これらの要素を満たせているか常にセルフチェックする姿勢が必要ですね。

このバーナードの研究意向、組織論の研究がさらに進んでいきます。

  • モチベーションやリーダーシップを研究したレスリスバーガー
  • 衛生要因で知られるハーズバーグ
  • 欲求の五段階説で有名なマズロー

これらの「人」を中心に据えた研究は1930年代から1950年にかけて進んでいき、1950年にはサイモンやマーチによるマクロ的視点での組織研究が始まりました。

テイラーとファヨールが生み出した経営学が、メイヨーとバーナードに引き継がれ、さらにミクロ組織論やマクロ組織論に枝分かれしていった、というのが1950年代までの流れになるのです。

この後、1960年代に入ると本格的な戦略論が展開されるようになっていきますが、そちらは別記事で紹介していきますね。

「経営戦略概論」、とてもおすすめなので経営戦略を俯瞰したい方はぜひ読んでみてください!

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