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こんにちは、Shin(@Speedque01)です。ぼくは現在外資系コンサルティングファームでマネージャーとして働いていますが、入社当初は抜群に落ちこぼれていました。
そのときの話は下記の記事にまとめてあります。
「議事録を取っておいて」といわれ、ワードを立ち上げながら言葉を拾うものの、日本語として頭に入ってこないため、メモもまったく意味不明なものでした。それを一晩中かけて意味がわからないなりにまとめたものを翌朝先輩に提出しましたが、 「おまえ、いったい何聞いてたんだよ・・・もういいよ、おれやっとくから」 の一言で、ぼくの仕事は巻き取られました。 それからも状況はまったく改善の目処が立ちませんでした。
議事録を書けといわれても、会議の内容がわからない。パワーポイントを作れといわれても、資料の作り方がわからない。エクセルで分析しろといわれても、分析って何をすればいいのかわからない。そんなことの繰り返しでした。いくら新人であっても、ここまでダメだと先輩やマネージャ達もだんだんと愛想を尽かし始めます。
その結果、ぼくが任せてもらえる仕事は、少しずつ、しかし着実になくなっていきました。 最終的に、ぼくがまともにできるのは資料のコピー取りだけとなりました。しかし、そこでも「両面印刷」といわれていたのを「片面印刷」に聞き違え、紙と時間を無駄にする結果に終わりました。
そこであきれた先輩に言われた言葉が、冒頭の言葉です。 「おまえコピーすらまともにできないんだな。もう任せられる仕事ないわ。帰れよ、もうあとやっとくから。」でした。
改めて読んでみても「ひどいなあ・・・」と思わざるを得ないです。そのあといろいろな紆余曲折はあったのですが、今は周りの人からもそこそこ評価を頂き、毎日楽しく仕事をしています。
さらに、仕事をテーマにしたビジネス書の出版や、仕事に関するオンラインコミュニティの運営、仕事術に関するラジオ配信等々、さまざまなチャンスをいただけるようになりました。
本当に何もできず目の前が真っ暗だったときから考えると、今は本当に幸せです。しかし、どのようにしてその真っ暗闇を抜け出し、現在のように楽しく仕事ができるようになったのか、体系立てて整理をしていないことに気づきました。
おそらく、過去のぼくのような苦しみを現在進行形で感じている方も少なくないはずです。そのような方のために、ぼくが今までにやってきたことを具体的にまとめられれば、と思い、この記事を書いています。
仕事は「課題特定」「打ち手作成」「実行」の3つからなる
そもそも仕事とは何でしょう?
プログラミング、営業、コンサルティング、生産管理、製造・・・種類があまりにも多すぎて一緒くたに語ることは不可能なように思えます。しかし、コンサルタントとして複数の業種に関わった経験から、「仕事には共通のプロセスがある」ということに気がつきました。
それは、「課題特定」「打ち手作成」「実行」の3つです。ほぼすべての仕事は、これらの3つのカテゴリのどこかに位置すると考えてよいでしょう。それらを全て実施していく立場の人もいれば、「実行のみやる」という人もいるかもしれません。
しかし、「仕事を楽しむ」には、仕事にはこれらのプロセスがあることを理解し、それぞれで必要なマインドやスキルを身につける必要があります。
ひとつずつ解説していきます。
課題特定
仕事である以上、「相手」がいます。「いや、自分はお客様の前に立つ仕事じゃないから・・・」という人もいるかもしれませんが、最終的にあなたがしているその仕事は誰かのためになっている = 誰かの課題を解決するためのものです。
また、たとえお客様がいなくても、あなたの目の前には「上司」がいますよね。その上司を擬似的なお客様とするのも良いです。上司はそのまた上司(もしくはお客様)から、解決すべき課題を与えられていて、それをなんとかするためにあなたに仕事を頼んでいます。そういう意味では、上司はあなたにとっての「お客様」になるのです。
相手が上司であれお客様であれ、そこに仕事がある以上、何かしら解決すべき「課題」があります。あなたの仕事は、その「課題」を解決するためにある活動なのです。
「当たり前じゃないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。ただ、本当にこれを常日頃から意識しながら仕事をしている人はあまり多くないのではないか、とぼくは思っています。
「仕事とは課題を解決するものである」という一見当たり前のことができていない・・・これは実は恐ろしいことです。相手が解決したい課題が何かわからないまま手を動かしているということは、その活動が本当にお客様の課題を解決できるのかどうかわからない、ということになります。
つまり、いくら一生懸命やってもそれが無駄になる可能性がある、ということなのです。無駄になってしまったら、それはただの運動であり、仕事とは呼べません。
まずは、相手が抱えている課題は何なのか明確にすること。それが仕事のファーストステップです。
打ち手作成
相手が抱えている課題を特定できたら、次は「打ち手の作成」に移ります。
- 相手の課題を解決するには、どのような方策が必要なのか?
- その方策を実現するためのコストはどの程度か?実現性はどうか?
- 本当にそれしかないのか?他にもっといい方法はないのか?
- その方策で本当に課題を解決できるのだろうか?
等々いろいろな問いかけをしながら、相手の課題を解決するにはどうすればいいか、真剣に考え抜いていきます。
また、お金や時間に限りがなければ、考えついた打ち手をかたっぱしからやっていくというやり方もありかもしれません。しかし、そんなことは現実にはありませんよね。
筋のいい打ち手をいくつか揃えたら、それを横並びで比較して実践のときの優先順位をつける、という作業も必要になってきます。また、そもそも「筋のいい打ち手」を考案するためには、対象の作業や業界についてある程度深い知見を有していたり、過去のノウハウを活用するためのリサーチスキル等も必要になってきます。
これらのスキルの詳細については、後ほど説明します。
実行
相手の課題を特定し、それを解決するための打ち手を揃えることができたら、後は実行するだけです。
実は、仕事に悩む人はこの「実行」だけにフォーカスしてしまっていることがあります。なので、いろいろな記事や意見に惑わされてしまい、
- 英語を勉強しなければ!
- プログラミング!
- いやいやタスク管理だ
- まだエクセルの関数を全然覚え切れていない・・・
- 仕事のスピードをもっと上げなければ!
のような、いわゆる「ビジネススキル迷子」になってしまいがちなのです。
実行に際してどのようなスキルが必要になるか、それはもちろんケースバイケースです。ただ、どの仕事をするにしても共通して大事なものもあるので、それも後ほど説明していきます。
では、次に仕事の各プロセスにおいて、必要になるスキルを一覧化して説明していきます。細かく書いていくと限りがなくなってしまうので、「どのような仕事にも共通するもの」「特に重要度が高いもの」という観点で、3つずつ選定しています。
課題特定時に必要になるスキル一覧
課題特定は、どのような仕事でも一番最初にくるプロセスです。
- 相手はいったい何に困っているのだろうか?
- 現在見えている課題の背後に潜む、真の課題はなんだろうか?
- どのようなことをしたら、相手は喜んでくれるのだろうか?
これらの質問を自分に投げかけ、相手にさまざまな方向から問いかけ、課題を特定していくことが必要になります。
そのためにはもちろん「考える力」は大切なのですが、それと同等かそれ以上に大事なものがあります。それは、「相手のためになろうとする姿勢(外向き思考)」と、「相手への興味」です。
ひとつずつ説明していきます。
外向き思考
「外向き思考」という言葉について、聞きなれない方がいるかもしれません。ベストセラーである「自分の小さな「箱」から脱出する方法」のビジネス版ともいえる本、「管理しない会社がうまくいくワケ」で提唱されている考え方です。
自分の小さな「箱」から脱出する方法 ビジネス篇 管理しない会社がうまくいくワケ
この本では、さまざまな具体例を引き合いに出しながら、「外向き思考」の素晴らしさと実践方法を具体的に説いてくれています。
実は、過去にブログ記事として紹介をしています。
外向き思考とは、「人や社会に対して、どのように貢献できるだろうか?」と考えることを指します。普通は自分のメリットのみを考えて行動してしまいますが、それは「内向き思考」と呼ばれ、外向き思考の対極に位置するとされています。内向き思考の人は、周りの人を「モノ」として捉え、「この人は自分の役に立つかどうか?」という基準でしか判断できない人のことを指します。
外向き思考は自分の利害を超えた広い視野を持ち、周囲の人たちがそれぞれ違ったニーズや目的を持っている「人」として扱う考え方です。
「相手への貢献?そんなものはきれいごとだ!」と思う人もいるかもしれません。
でも、よく考えてみて欲しいのです。「自分の昇進」「自分の手柄」だけを考えて動く人と、「目の前の人にどうやって貢献できるだろうか?」と考えながら動く人、どちらのほうが信頼されるでしょうか。どちらのほうが長期的な結果を残すことができるでしょうか。答えは明白だと思います。
「情けは人のためならず」という言葉があります。相手のためを思って動いていると、それが知らず知らずのうちに自分のもとに返ってくるのです。
この法則は今でも変わりません。相手の課題が何か特定することが仕事のファーストステップなのだとしたら、まずは「相手が困っていることは何だろう?」「相手にどのように貢献することができるだろう?」と考える「外向き思考」を習慣づけることは、大変重要であるといえます。
相手への興味
特に上司との関係に悩む人によく見られるのが、「相手に興味を持っていない」という問題です。
- どうしたら怒られないですむだろう?
- どうやったら早く帰れるだろう?
- 自分はどうしたら評価されるだろう?
- どのようなアピールをしたら昇進できるだろう?
そのようなことを考え続けていると、仕事において「課題特定をすること」はほぼ不可能になります。
課題特定をする際に大事なのは、相手のことを深く理解し、お互いに信頼しあうことです。そうでないと、相手がホンネで話してくれることはなく、結果として課題の特定が甘くなったり、あさっての方向に行ってしまいます。
とすると、どうすれば相手と気持ちよくコミュニケーションを取れるか、というところがポイントになってきます。
ここで、みなさんに少し考えてみて欲しいのです。
- 「話しやすいな」と感じる人に共通する特徴は何でしょうか?
- 「話しづらいな」と感じる人に共通する特徴は何でしょうか?
答えはいくつかあると思いますが、もっともシンプルな答えは「他の人に興味を持ってくれる人」は話しやすいですし、「自分の殻に閉じこもる or 自分の話しかしない人」は話しづらい、ということになるでしょう。
みなさんの周りにいる「話しやすい人」は、ほぼ例外なく「相手」にフォーカスしたコミュニケーションを取っているはずです。
- なるほどー、おもしろいね!Shinはなんでそういうふうに考えたの?
- そんなことがあったんだ!もっと聞かせてよ。
- それでそれで?
- その経験は今後の糧になりそうだね!そんな経験をしたなんてうらやましいなあ
このように、相手に興味を持ち、話を促してくれるような人は、勝手に情報が集まってきますし、周りからも信頼されます。自分が圧倒的な情報力や知識、スキルを持っているわけではないのに、自然と課題特定に必要なリソースが集まってくるのです。
逆に、いくら知識やスキルがあったとしても、自分の話をするだけで相手の話を聞かなかったり、傷つきたくないゆえに自分の殻に閉じこもってしまう場合は、課題特定がうまくいかないケースが多いでしょう。
この「相手への興味」をつけるためにぼくがオススメしているのは、「必ず相手の発言にコメント(共感でも質問でもなんでもOK)をすること」です。これができれば、相手はどんどんあなたに心を開いてくれますし、どのような場所でも情報が集まるハブのような人になれます。
オンラインコミュニティ「Players」でも、「ポジティブ思考スレッド」や「ブログスレッド」にてこの方式を導入しています。自分の投稿をする際、前に投稿した人になんでもいいからコメントをつける、という制度です。
これにより、お互いのコミュニケーションが活発になりますし、「相手に興味を持つ」という習慣をつける人が増えてきて、とてもいい雰囲気になっています。オススメ。
基礎的な思考力
「外向き思考」と「相手への興味」は、ソフトスキル的な側面が強いですが、実はこれだけで課題特定がうまくいくわけではありません。
相手は、簡単に解決できないからこそあなたに仕事を頼んでいるわけであり、それを紐解いていくためにはある程度の思考力が必要になってきます。
「思考力をつける」と簡単に言っても、そこにはさまざまな方法があります。今度構造化して書いてみようと思っていますが、ぼくが実践した中で特に効果があったトレーニングや思考習慣をいくつかご紹介します。
クリティカルシンキング
お手軽かつ本質的な方法として「クリティカルシンキング」があります。
こちらについては、過去記事で紹介しています。
「自分が正しい」と強く信じて何らかの行動を起こしたものの、大失敗してしまった経験がある人は、「ああ、この世の中に絶対はないんだな」と強烈に心に刻み込まれることになります。
その結果、「絶対はないんだ」ということを心底理解することができ、モノゴトに対して「それは絶対じゃないよね」「穴はあるかもしれないよね」「無理そうに見えるけどうまくいくかもしれないよね」と、モノゴトを批判的(クリティカル)に見ることができるようになるのです。
「クリティカルシンキング」と聞くと、どんなことにも批判的になるネガティブな思考法のように捉えられてしまうかもしれません。確かに「絶対うまく行くよ!」と言っている人に対して「いやいや、絶対ではないでしょう」というだけでは、あまり価値があるとはいえません。
逆を考えてみましょう。何らかの壮大な目標を持っている人がいて、周りの人はみんな「そんなこと絶対うまく行かないよw」と嘲笑しているとします。そのようなときに、クリティカルに考えられる人は「いやいや、絶対うまく行かないなんてことはないよね。これこれこうすればうまくいく可能性はあがっていくと思うよ」というコメントを出せるのです。
「強い言葉で言い切る」というのもときには必要にはなります。
しかし、「絶対に正しい答え、なんていうものはない」ということを理解して欲しいな、と思います。
この姿勢がついていると、複数の異なる立場の人の要望を同時に満たすソリューションを見つけたり、困難な課題にありがちな「コチラを立てればあちらが立たぬ」状態を解決することができるようになるのです。
ゼロ秒思考
「A4メモに自分の考えを書き出していく」というシンプルな方法にも関わらず、思考力の向上に効果的なのが「ゼロ秒思考」です。こちらについても、過去にまとめています。
具体的には、A4用紙を横置きにし、1件1ページで、1ページに4-6行、各行20字-30字、1ページを1分以内、毎日10ページ書く。したがって、毎日10分だけメモを書く。(下記参照)
ゼロ秒思考以外にもさまざまな思考トレーニング方法はありますが、この方法のすばらしいところは「シンプルである」ということです。
考えたことを短時間でとにかくアウトプットする。そのためにメモを書き出す。
シンプルですが、自分の頭の回転を早めるためにベストな方法のひとつであることは間違いないです。オンラインコミュニティ「Players」でも、お互いに励ましあいながらゼロ秒思考を実践するためのスレッドがあり、日々みんなで継続しています。
イシュードリブン
打ち手作成や実行コストを極小化するために身につけてほしいのは、「まずは解くべき課題(イシュー)を特定する」というポイントでした。これを明確かつ具体的に解説してくれている本は、マッキンゼー出身の安宅氏による「イシューからはじめよ」です。
こちらについては、過去に記事にもしています。
問題はまず「解く」ものだと考えがちだが、まずすべきは本当に解くべき問題、すなわちイシューを「見極める」ことだ。ただ、これは人間の本能に反したアプローチでもある。詳細がまったくわからない段階で「最終的に何を伝えようとするのか明確に表現せよ」と言われたら、きちんとものを考える人であればあるほど生理的に不愉快になるだろう。
よって、「やっていくうちに見えてくるさ」と成り行きまかせが横行するが、(多くの人が経験しているとおり)これこそがムダが多く非生産的なアプローチだ。
相手とのコミュニケーションだけではなく、自ら情報収集し、仮説を立て、説くべきイシューを特定する。実は想像以上に難しいことなのですが、身に着けることができると一気に仕事が速く、正確になります。
打ち手作成時に必要になるスキル一覧
相手とのコミュニケーションや、自ら考え抜くことで相手の課題を特定できたら、次はその課題を解決するための「打ち手」を作成していく必要があります。ここに必要なスキルについて、以下で解説していきます。
フレームワーク策定力
課題を特定して打ち手を作成するときに重要なのは、それを構造化して捉えることです。時系列で並べることもあれば、因果関係を明示することも、既存のフレームワークを使って抜け漏れなく整理することもあります。
有名な既存フレームワークであるSWOT分析を使って、自己分析をしてみたのが下記になります。
簡単に説明しますと、企業の状況を、内部の環境(強みと弱み)と外部の環境(機会と脅威)から分析するフレームワークです。非常にわかりやすく使い勝手がいい反面、定性的で議論がまとまらないこともよくあったりします。
各項目については、下記で簡単に説明しますね。
- 強み(Strength):自社の中で、目標達成のために使える強みを表す。
- 弱み(Weakness):自社の中で、目標達成を阻害する可能性がある弱みを表す。
- 機会(Opportunity):外部で、自社の目標達成を助ける機会を表す。
- 脅威(Threat):外部で、自社の目標達成を阻害する可能性がある脅威を表す。
SWOTはあくまで一例であり、実際の仕事で「既存フレームワークを当てはめてはい終わり」ということはほとんどありません。
もちろん、企業分析の前提として3C(自社、競合、顧客)や、マーケティングに関する議論の際に4P(Price, Place, Promotion, Product)をカバーできているか確認する必要がありますが、それに留まらずに各ケースごとの構造を明確化し、どこにフォーカスするか考える必要があります。
特定した課題がどう生まれているか、どこを直せば効果的に修正することができるのか、チームメンバーと議論しながら考えていきます。その際に、既存フレームワークを流用しつつ、適切なフレームワークを生み出せるかどうかが、打ち手を作成するときのキモになります。
そこまで難しく考えすぎず、意外と簡単な軸で整理できることもあります。
業界に関する知見
フレームワークだけで効果的な打ち手が生み出せるとは限りません。どのような仕事でも、その業界特有の知識や常識があり、それをある程度理解しておくことで、具体性のある打ち手を繰り出せるようになるのです。
逆に、それをしないと「そもそも何がわからないのかもわからない」という状況に陥ってしまいます。「打ち手の考案」どころの騒ぎではなくなってしまいます。
短い時間でも一気に情報を頭の中に叩き込み、知見を増やしていく方法は、下記の記事で解説しています。
- 「サルでもわかる」系参考書を読む
- 単語集を作る
- 専門書を3冊読む
- 社内で勉強会を開く
ただ難しい本を読んでも、それをすらすら理解できるほど頭のいい人というのは、実はそれほど多くありません。簡単にできることからはじめ、そしてそれをどんどんアウトプットするクセをつければ、他の人に「おお!」と思ってもらえるような知識が徐々についていきます。
リサーチ能力
ある程度業界の知見があったとしても、それだけで足りることはありません。個別の仕事、プロジェクトについてはさらに深く理解をする必要があります。
そのときに必要なのが「リサーチ能力」です。
リサーチというと「ググること」がリサーチだと思うかもしれないですが、そんなことはありません。情報ソースとしては、
- 本
- 有料のデータベース
- 社外 / 社内の専門家へのインタビュー
- 顧客インタビュー
- インターネット
等があります。
打ち手を考える際にどのような情報が必要なのか、現在自分が有していない情報はどのようなものなのか、そしてそれはどのようなソースから獲得することができるのか明確に考え、闇雲にリサーチに時間を費やさないことが必要です。
リサーチの方法について具体的にまとまっている書籍としては「アナリストが教えるリサーチの教科書」がおすすめです。
実行時に必要になるスキル一覧
しっかりと課題を理解し、実現性のある打ち手を考案できたとします。そうしたら、最後のステップとしては「やること」になります。
いくらお客様の気持ちを理解し、問題を把握し、解決方法を導いたとしても、それを実現することができなかったら絵に描いた餅に過ぎません。最後までやりぬいてこそ、結果を出すことができるのです。
根本になるのは下記の記事で解説している「グリット」かもしれません。
私たち研究チームは、ウエストポイント陸軍士官学校に行き、どの士官候補生が陸軍訓練に残り、誰が中退するか予想しようとしました。全国スペリング・コンテストでは、どの子どもが競争でより勝ち残るか予想しようとしました。教育困難な地区で働く新米教師を調べて、どの教師が学年が終わるまで教えるのを続けていて、そのうち誰が生徒の学習成果をあげるのに最も成功するか考えました。民間企業とも提携して調べました。どの販売員が仕事を続け、そして誰が一番お金を稼ぐか。
こうした様々な状況において、ある一つの特徴が大きく成功を左右していました。それは社会的知性ではありません。ルックスでも 身体的健康でもIQでもありませんでした。やり抜く力(グリット)です。
もう少し具体的な方法として、下記で「没頭力」「タスク管理」「改善力」を挙げています。
没頭力
人が出せる結果というのは、能力だけには依存しません。どれだけのパフォーマンスを出せたか、という発揮率も実は非常に大事になります。
結果 = 能力 x 発揮率 と分解することができるでしょう。
いくら能力が高い人であっても、ダラダラと取り組んでいて発揮率が低い状態だと、あまり良い結果は出せません。能力が高くないが、100%集中できた人に負けてしまうことも多々あります。
能力をすぐにあげることは難しいですが、発揮力を常に最高値近くにとどめておく方法はあります。それが、「没頭すること」です。
没頭については、下記の記事で詳しく記載しています。
没頭する仕組みを作るためには、日々の仕事や勉強に対しても、これらの3要素を組み入れていけばいいのです。
- ゴールがあいまいな仕事についてはすぐに明確化し、細かいタスクに落とす。そして、なるべく早くお客様や上司からレビューをもらえる体制を整える
- 急なアポイントメントや会議を極力避け、日中のスケジュールを自分でコントロールできるようにする
- あまりにも困難すぎる仕事や退屈すぎる仕事を請け負うのをやめ、「今の自分ではぎりぎり届かないかな・・・届くかな・・・」ぐらいの仕事をやりつづっける
こうやっていくことで、どんどん没頭しやすくなっていきます。
「これをやってみよう!」と決意しても、すぐにフラフラしてしまう人は、一度没頭して集中してみることをオススメします。そうすることで、大変そうに思えたことでも意外と早く進み、道が開けていくことがよくわかるようになるはずです。
タスク管理
次に大事なことがタスク管理です。
仕事中は本当にいろいろなことが起こります。優先順位も変わりますし、仕事を頼んできた人のノリも全然違います。数自体も多く、人間の頭の中で管理できるレベルを超えてしまっているのです。
ぼくはこのタスク管理が大変苦手でした。会社員になって最初の頃は、ほぼできていませんでした。そのせいですぐにタスクが飛んでしまい、上司に怒られる始末でした。
そのときの経験から、「そもそもタスク管理とは何なのか」「タスク管理ができない原因は何か」「それを改善するにはどうすればいいか」とずっと考えてきました。その結果、自分なりに整理して出版したのが下記の書籍となります。
タスク管理に悩んでいる人はぜひお読みください。イラストも豊富に入れており、読みやすい書籍となっています。
すぐにタスク管理のためのツールを手に入れたい方は、下記で私が使っている実際のTODOリストを入手することもできますので、そちらもよければどうぞ。
改善力
実行する際に大事になってくるのは、「改善する力」です。
どんな仕事においても、「完璧」はありません。失敗は何度も繰り返すものですし、うまくいったように見えても甘いところは必ずあります。それをそのままにしてしまうと、そこで成長が止まってしまいますし、次に何か実行しようとしたときも同じことが繰り返されます。
常に自分を批判的に見て、まずかったところを明確化する。そして、それを直して次のチャンスに取り組む。そういう当たり前の改善を繰り返せるかどうかも、物事を実施して最後までやりぬくことに非常にインパクトがあります。
「仕事ができるようになりたい人」はこの順序で取り組もう
仕事の全体像とプロセス、それぞれにおける必要なスキルについて解説してきましたが、これらをすべて一気にできるかというと残念ながらそうではないはずです。
今仕事に苦労している人、できるようになりたいと思っている人にとっては、少々ハードルが高いのではないでしょうか。
先ほどのプロセスや必要となるスキルは頭のすみっこにおいておきつつ、もう少し実現性の高いプロセスについて解説していきましょう。
1.「仕事は人のためにするもの」であることを理解する
まずはここです。「仕事は言われたことをやること」ではなく、「仕事は人のためにするもの」であることを本当の意味で理解して欲しいのです。
本でもブログでも、「価値提供」とか「お客様のことを考える」とか、そういう話はたくさん出てきます。いろんな角度から、多くの人が語っています。
「仕事は他の人のためになること」というのは、当たり前ではあるものの、大変重要なことなのです。しかし、多くの人は「怒られたくない」「出世したい」等、「自分のため」を絶対の判断軸として仕事をしています。
「仕事は人のためにするもの」である・・・まずはそれを理解してみることからはじめてほしいのです。余裕がある人は、自分でビジネスをやってみるとより深く理解できるでしょう。お金をいただく際には、想像以上にお客様のことを考え、サービスを提供する必要があるのです。
「失敗したくない」という方は下記の記事をどうぞ。
2.何でもいいので1時間だけ「没頭」してみる
仕事がうまくいかず悩んでいる人は、「またうまくいかなかったらどうしよう」「怒られたくない」「早く帰りたい」という雑音で頭がいっぱいになっています。
その雑音のせいで集中できず、仕事が進まず、結果が出ずにまた怒られ、仕事がいやになる・・・そういう悪循環になってしまっているのです。
なんでもいいので、まずは1時間没頭してみましょう。つまらないルーチンワークでも問題ないです。
まずは「仕事をするときに没頭する」という感覚をつかんで欲しいのです。それが一度できれば、他のことにも応用できるようになります。
まずは1時間だけでいい。何かの仕事に没頭してみてください。
3.今の仕事の最終目的を明確化してみる
次に、今の仕事はいったい何のために行っているのか、その最終目的を明確にしてみる努力をしてみることをおすすめします。
仕事がつまらない、やりがいがない理由のもっともメジャーなものの一つは、「何のためにやっているかわからないこと」です。とりあえず毎日職場に通っているが、そこでやる作業が自分にとって、社会にとってどんな意味があるのかわからなければ、面白いはずがありません。
人は、何かしらの目的があれば行動できますが、それがなければ何もしないものです。それにもかかわらず、目的がないまま働き続ける人のなんと多いことか・・・。非常にもったいないことだな、といつも感じています。
とはいえ、仕事の目的がなんなのか、深く理解することは意外と難しいものです。そのクセがついている人にとっては楽にできますが、そうでない人は頭を悩ますことでしょう。
私がオススメしているのは、「何でもいいので疑問を10個洗い出してみること」です。
- A社は何で海外進出をしたいのだろう?
- 国内では売上がなかなか上がらないから海外に活路を求めているということ?
- 国内では充分に売上向上施策を実施したのか?
- A社のメインビジネスは何だろうか?
- 今回対象となっている新薬XはA社の売上のどのぐらいを占めているのか?
- 新薬Xをメインで購入しているユーザーはどのような層か?
- 新薬Xはそもそもどのような薬効があるのか?
- 新薬Xの成分要素はどのようなものか?
- 新薬Xの競合となる製品はどのようなものか?
- 新薬Xと競合製品の差別化ポイントはどのようなところにあるか?
このように、今の仕事に対して質問をたくさんぶつけていくと、だんだんとその最終目的が明確になってきます。ぜひ試してみてください。
4.「タスク管理」に「没頭」してみる
1から3を実施していくと、ひとつひとつの仕事のスピードやクオリティが上昇していくはずです。その次のステップとして、「タスク管理」をできるようになってほしいと考えています。
多くのタスクを同時並行的に実施しつつ、優先順位もつけていく。さらに、自分のすべき仕事と自動化する仕事、他の人へ任せる仕事を分類して、全体を仕組み化していく。そういうことができるようになると、仕事はどんどんラクに、かつ楽しくなっていきます。
そのための第一歩として、タスク管理が重要なのです。
そのときに、ダラダラとやるのではなく集中して自分のタスク管理方法を構築し、自分の毎日のルーティンの中にいれていくと良いでしょう。
具体的なやり方は、すべて「シンプルTODOリスト仕事術」に記載しているので、良ければお読みください。
5.浮いた時間で「インプット」&「アウトプット」をする
1-4まで実施をし、だんだんと仕事に余裕が出てきたら、次は自分で「インプット」と「アウトプット」を繰り返してさらに力をつけていくことをオススメしています。
下記のBizspa様への連載記事にも詳細を書いています。
これを読んでくださっているみなさんは、毎日仕事が忙しいと思います。家に帰ったら疲れてしまってすぐに寝てしまう、という人も少なくないのではないでしょうか。
しかし、この優秀な上司は「それではビジネスパーソンとして埋没してしまう」といっていました。
「毎日の仕事に追われていると、仕事というアウトプットだけになってしまう。そのなかで、いかに効率化やその先を見据えた判断をするための知識をインプットするか。それがないと集団の中で抜きん出ることはできないです。
日々の作業を効率化し、そこであまった時間をインプットの時間に繋げるのです。私は複数の領域の仕事を転々としましたが、その仕事に合わせて常にインプットをしてきました。
在庫管理、需給業務、債権債務の照合、システム導入、法規制、英語、M&Aサポート、海外進出戦略策定……いろいろとありましたが、そこで一気にインプットをして、他の仕事にも応用するようにしました。そうやっていくと、いつの間にかどのような仕事が来ても、短時間で高いクオリティの仕事をこなせるようになりました。」
日々仕事が忙しいのは、必ずしも悪いことではありません。周りの人から頼られ、たくさん経験値を積んでいるということかもしれません。
しかし、それだけではいつか成長が止まってしまいます。なるべく毎日やることを効率化し、圧縮し、そこで生まれた時間をまた別の知識や経験に投資する。そうすることで、どんどん自分の力がついていきます。
忙しさに逃げるのではなく、仕事をさくさく片付けたらその時間でさらにインプットをし、アウトプットもしていく。それができると仕事のスピードはどんどん上がっていきます。
ぼくも、本業のコンサルタントに加えて、このブログやオンラインコミュニティ「Players」の運営、ビジネス書の出版やセミナー講師などさまざまな仕事をしていますが、これによって自分の仕事の幅がだいぶ広がりました。みなさんも、余裕が出てきたらぜひいろんなことに取り組んでみて欲しいです。
地道に取り組み「仕事を楽しめる人」になろう
「仕事がつらい」「もっと楽しみたい」という願いは、本当に切実なものです。仕事が全然できなかった経験があるぼくには、そのような悩みを持つ人をなんとかして救いたいという強い思いがあります。
今回の記事は、今まで考えてきた仕事に関することを網羅的に捉えた記事になります。ぜひ、リンク先の記事等も読みながら、なんでもいいので「一歩を踏み出すこと」、そして、できることならば「継続すること」を心がけてみてほしいな、と思っています。
仕事を楽しめる人が、ひとりでも増えますように。