ダンナは起業家!?苦労したことを5つ挙げてみる(寄稿)

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こんにちは、Shinです。今日は、スペイン在住でだんな様と一緒に起業されている方からの寄稿をお届けします。「起業したいなー」と無邪気に思っている方は、ぜひ一読してみると良いかと思います。

こんにちは、スペイン在住のmikaです。 わたしは2011年に日本を出てから、スペイン・フランスでの生活を往復しています。本拠地はスペインで、個人ブログ「スペインに暮らす」を運営しています。 そして、わたしの夫は起業家です。

今回の寄稿は、わたしたちが実際に体験した「起業してからの困難」や「それを乗り越えるための知識」を共有したいという思いを込めて書いています。

仕事とは、雇われて働く会社員だけの言葉ではありません。起業も「仕事」をしていく上で選択肢の1つです。Outward Matrixへの寄稿をすることで、仕事に悩む人、起業を視野に入れている方の参考になればうれしいです。

スペインで起業した夫

わたしたちは2016年の3月に、本拠地であるスペインで起業しました。 登記上の代表は夫です。 どちらかというと夫はマネジメントよりなので、営業力を担保するために営業させたらNo.1(トップ営業5年連続)である友人、マーケティングと日本市場に関することを得意とするわたしが起業メンバーとして加わりました。

夫はいわゆるアイデアマン。日常生活のふとした瞬間からいろんなアイデアや企画が浮かんでくるタイプの人です。長距離移動をしているときなど、車を運転しながらひらめいたアイデアについて議論することもしょっちゅうです。過去に話し合ったアイデアの多さは数えきれないほどです。

夫の突出した「マネジメント力」「解決力」「アイデア力」をよく知っていたので、いつかは自分たちのビジネスを展開していくだろうなとは思っていました。夫もそれを望んでいましたし。 そして、それに関する不安は特にありませんでした。

「自分たちのビジネス=起業」となるわけですが、わたしたちの中で「起業」という言葉は特別なものではなく、単なるプロジェクトのひとつという位置づけです。 スペインやフランスのみならず、他国ヨーロッパでも自分のプロジェクトを持っている人は多いです。

メインの仕事をしながら、サブビジネスが自分のプロジェクトであることも少なくありません。それが大きければ登記して法人化する、というだけ。わたしはそれと同じ感覚で捉えていました。 夫から「起業しようと思う」と言われた時も、特に驚きはしませんでした。

この一言をきっかけに、わたしたちは起業することになりました。 夫の力は信じていますが、自分たちの力だけではどうにもならないことは多々あります。それはどんな仕事をしていても同じですよね。例えそれが育児であっても。

相手がいる以上、自分たち(自分自身)でコントロールできることは少ない。そんなことを体感している起業生活ですが、わたしたちが特に苦労したことを5つシェアしたいと思います。

その1:業界全体の状況がよくなかった

まず第一に業界知識がないと始まりません。 わたしたちはスペインでレザー産業へ参入することになったのですが、知れば知るほど、やればやるほど業界の現状と根深い問題点が見えてきました。

スペインの革製品は世界でもよく知られています。その認知度は世界で1位・2位を争うほど。ヨーロッパに限って言えば、スペイン・イタリアが突出した知名度であることは世界でもよく知られているところです。

そんなスペインのレザー業界ですが、多くの会社は先祖代々から受け継がれていたり、家族経営が起点になっているケースが多いです。 今まではバブルと好景気のあおりを受け、変化することなく経営できていた企業が、数年前から続くスペインの大不況で倒産が相次ぎました。

その経済打撃をリカバーすることなく、未だにひどい不景気状態が続くレザー産業に足を踏み入れたのがわたしたちでした。

多くの企業が倒産し、生き残っているのは体力のある大手企業か、技術や経験のある中小企業です。 この限られた業界の中で見えてきた問題点は、小手先のテクニックで変えられるようなものではありませんでした。

業界全体の取り組み、しいてはスペインという国のブランディングへも関わってくる大がかりなものがキーワードでした。それに気づいたものの、力もない新参者のわたしたちができることは限られています。

自分たちにできることと少しずつでも業界を変えること、業界の根底にある大きな問題点にどう立ち向かうかが難しいところです。

その2:経験と実績がなかった

先に書いたとおり、わたしたちは突然起業することになりました。そして、参入した業界に関する知識も、経験も、実績もゼロからのスタートです。

起業準備で法人登記手続きをする前から、毎日コツコツと営業先となり得る企業のリストアップをしていました。一般企業なら担当地域のリストアップなどは営業アシスタントへ気軽にお願いしているレベルですよね。

そんな小さな営業事務的な作業も、すべて自分たちでやるしかありません。他にお願いできる人はいませんから。アウトソーシングで外注することもできますが、今から起業しようとしている中、売上がないのに経費を使うわけにはいきません。

そして、作った企業リストを元に営業をはじめるわけですが、売り込む前にまず「自分たちを知ってもらう」。ここに一番時間がかかりました。

スペインのレザー産業はある意味閉鎖的です。スペインの保守的な一面と、狭い業界、家族経営、不況で倒産が相次いだことなどがそれぞれ影響しているのでしょうが、新参者には手厳しい状況でした。 ただでさえ新参者なのに、その道に関する経験・実績が無いとなれば、その手厳しさは国は違えど想像つくかと思います。

もちろん、営業する前に知識はつけていきました。ビジネスとして話し合えるレベルまで熟知していたつもりです。

ですが、見たり聞いたりした情報はあくまでも前提情報でしかなく、実際に会って、営業しながら、取引しながら学んだことが真の情報であり、わたしたちの経験・実績となっていきました。

その3:知名度と信用がなかった

未経験業界・経験・実績なしのわたしたちには、その業界への知名度なんてありません。 営業先リストを片手に営業電話をし、実際に会って話を聞いてもらう。これを毎日やっていても時間的・物理的に限度があります。

わたしたちの体は1つですし、1日は平等に与えられた24時間。 「はじめまして」の挨拶アポを入れながら、初回アポが終わった企業へは何度も足を運んで関係性を深める必要がありました。このあたりは国が変われど同じですね。日本でも営業をされてる方はイメージつくと思います。

移動距離もばかになりません。営業先候補となり得る企業が多く存在しているのは、わたしたちの拠点から220km離れた都市。宿泊はせず日帰り訪問なので、1日に440kmの移動をするわけです。これを週1、時には週2でこなしていました。

物理的な問題で「ふらっと訪問」はできません。その日には入れられる限りのアポを入れ、会えるだけ多くの責任者に会い、とにかく顔を合わせる機会を増やせるように努めました。貴重なアポを無駄話しで終わらせない、内容の効率化を図ることも大事です。

また、業界イベントへも積極的に足を運びました。業界の最新動向を知るいい機会でもありますし、普段会えない企業にも会える絶好のチャンスです。そんなことを繰り返しながら、自分たちの顔を広めていきました。

でも、認知されるだけでは取引は任せてもらえません。わたしたちが何者なのか、どんな強みがあるのか、それが先方にとってどんなメリットがあり、わたしたちと協働することでどんな効果が得られるのかを少しずつ知ってもらい、信用してもらうために多くの時間を費やしました。

すると、次第に認知度はあがり、徐々に信用してもらえるようになっていきました。

その4:メンタルコントロールが難しかった

これはとても大きいです。

企業勤めをしていたときは嫌な仕事をは誰かにお願いできたり、回避することもできました。自分の特性や強みに合わないからと、仕事を変えてもらったり異動することだってできてしまいます。

ですが、起業となればそうはいきません。 自分の得意なことに注力するだけでなく、苦手なこと、嫌なことにも着手せざるを得ません。外部の専門家にお願いすることもできますが、それでも最低限の知識は必要ですし全体を把握しておくことは必須です。

となると、嫌な仕事・苦手な仕事への向き合い方も自分なりに考え、対処するほかありません。また、クライアントからの率直なフィードバックは直球に刺さります。 相手に喜んでもらいたい、気持ち良くなってもらいたい。そう思いながら日々の仕事に取り組むものの、クライアントからの理不尽な要望とサプライヤーへの折衝とで激しく消耗することも少なくありません。

レザー業界は革そのものの質がモノをいう世界。質・生産量・価格のバランスはとても難しいものでした。そして、その3点に関してはわたしたちの力で何とかなるものではありません。自分たちが我慢すれば・・・で済む問題でもありません。

クライアント・サプライヤーどちらへも正直に向き合い、嘘をつかず真摯に対応することで、その時々の最善回答を選択するまでです。辛辣な意見にこそ次へのヒントが隠されてるとはいえ、そのフィードバックは直接自分たちに降りかかってきます。そこに逃げ道はありません。

この逃げ道の無さ、自分たちの未熟さ、物理的な限界、迫られる時間などに対する感情のコントロールは難しいところです。 その中でも、「迫られる時間」は特にこたえました。

その5:お金がなかった

起業した事業が軌道に乗り、利益を上げ、給料として支払われるようになるまでは自分たちの貯蓄からやりくりしていました。会社への投資、払うべく消費税、毎月の経費、わたしたちの生活費。

利益(収入)が無い中で、毎月湯水のように流れて出ていくお金を見ているだけというのは精神的にかなりこたえました。何億と蓄えがあればこのような緊迫感はないのでしょうが、一般庶民なわたしたちにそんな金額の貯蓄などはありません。あったのは家を買うときのために貯めていた頭金数百万円です。事業が軌道に乗るのが先か、自分たちの貯金が底をつくのが先か、まさに時間との闘いでした。

レザー業界はとにかく動きが遅いです。製造だけであれば仕入れた革から既に決まった商品を生産するだけなのでスピード早く生産ラインを作ることはできますが、わたしたちが行っているのは革の卸です。

  • クライアントの要望に合わせた革を見立て、取り寄せ、提供するまでに数週間~1ヶ月
  • 革を受け取ったクライアントはサンプル革を元に試作品をつくり、完成した製品を吟味する。ここで1ヶ月~1ヶ月半
  • その後、クライアントからのフィードバックをもらう。 革を取り寄せ始めてから最終フィードバックをもらうまでには早くて2ヶ月、長期休暇などが入ると3ヶ月、下手するとそれ以上かかったりします。

とにかく動きが遅いレザー業界、わたしたちの最大の敵は「時間」でした。 ありがたいことに、クライアントからはそれなりに好評価をいただいていました。が、利益となるまでには想像以上の時間がかかる。お金が底をつくか、利益となって給料を出せるか、「時間」という目に見えない大きな敵がわたしたちの前に立ちはだかり続けました。

さいごに:これからが勝負どころ

わたしたちはまだ発展途上のプロセスにいます。まさに今、成功するか失敗するかの瀬戸際にいます。いや、成功とも失敗とも思っていません。

このまま事業を継続する価値があるのか否か、です。 そこに自分たちのプライドとか見栄とかはありません。撤退したほうが良ければ見切りをつけて撤退するし、続けた方が良さそうだと思えば続ける。

これからも(これからの方が?)いろんなことに直面すると思いますが、柔軟な発想と行動力で常にフレキシブルな姿勢で臨みたいと思っています。

この記事を最後まで読んでくださりありがとうございます。 今後の執筆活動の参考にさせていただきたいので、今回の寄稿に関して感想やご意見などがありましたら、ぜひお聞かせいただきたいと思っています。メールアドレス「europelife15@gmail.com」までご連絡くださると幸いです。

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とてもリアルで真に迫った素晴らしい記事でした。ブログ等のWebビジネスとは違い、実際にモノを輸入し、取引先に買ってもらうビジネスのプレッシャーは想像を絶するものでしょう。

起業のストーリーはいろんなところにありますが、どれも現在うまくいっている一握りの人たちの話です。Mikaさんのストーリーはまさに現在進行形で、リアルな話がとても多く刺激的でした。「起業ってどんな感じなのかな?」という方には刺さったのではないかと。

Mikaさん、今後も無理しすぎずビジネス拡大を頑張ってくださいね!ぼくでよければいつでも相談相手になりますので。

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