「イノベーション・オブ・ライフ」は人生を考えるときに最適な一冊。

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こんにちは、Shin(@Speedque01)です。「イノベーションのジレンマ」で有名なクレイトン・クリステンセン教授が、その経営戦略を人生訓に落とし込んだ本があることをご存知でしょうか。

その本の名前は「イノベーション・オブ・ライフ」。クリステンセン教授の経営論、やさしさがギュッと詰まった名著でした。

こちらです。

クレイトン・クリステンセン教授とは

本書の紹介に入る前に、著者のクレイトン・クリステンセン教授の紹介をします。

クリステンセンは1952年4月6日にアメリカ合衆国ユタ州ソルトレイクシティに8人兄弟の第二子として生まれた。ブリガムヤング大学経済学部を首席で卒業後、オックスフォード大学の経済学修士、ハーバード・ビジネス・スクールの経営管理学修士、経営学博士を取得した。学生時代は203cmある身長を生かし、バスケットボールチームに入っていた。

ボストン・コンサルティング・グループではコンサルタントおよびプロジェクトリーダーとして1979年から1984年を過ごし、製造業向けのコンサルティングサービスに貢献した。その間、ホワイトハウス・フェローとして運輸省長官を2年間補佐した。その後、1984年にはMITの教授数名と共同で Ceramics Process Systems Corporationを設立し、会長兼社長を務めた。

1992年からハーバード・ビジネス・スクールの教員となり “Building and Sustaining a Successful Enterprise”というコースを担当している。この間、わずか2年で博士課程を取得し、その博士論文は、最優秀学位論文賞、ウィリアム・アバナシー賞、ニューコメン特別賞、マッキンゼー賞のすべてを受賞した。

2000年にはイノサイトも設立する。さらに、2005年には関連会社 Innosight Venturesを立ち上げ、シンガポールにおけるベンチャーキャピタルも手掛ける。ここでの経験を生かし、Rose Park Advisorsという投資会社も2007年に設立した。 イノベーションと企業の成長に関する研究が評価され、最も影響力のある経営思想家トップ50を隔年で選出するTHINKERS50 のトップに3回連続で選ばれた。

クレイトン・クリステンセン – Wikipedia

ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)を卒業したあとにボストン・コンサルティング・グループ(BCG)で活躍、ホワイトハウスで運輸長官のサポートをしたり会社設立をしたりしつつ、HBSの教員となります。

その能力のみならず人格者としても非常に有名で、敬虔なクリスチャンとのことです。ここまですごい能力を有していたら、人をばかにしたり傲慢になってしまうのが普通ですが、クリステンセン教授はそんなことはまったくなさそうですね。どこかでお会いしてお話できたら嬉しいな。

クリステンセン教授の人生訓が詰まった「イノベーション・オブ・ライフ」

「イノベーション・オブ・ライフ」は、クリステンセン教授がHBS卒業生に向けて実施する最後の授業をもとに作られた本です。

本書は『イノベーションのジレンマ』をはじめ、多数の名著を著した技術経営の大家クレイトン・クリステンセンが、これまで自身が教えてきた経営戦略を人生訓に落としこんで語る一冊です。

2007年に心臓発作、そして2年後にガン(悪性腫瘍)、さらに2010年には脳卒中で倒れたクリステンセン教授。戦略論や経営学の分野では最高峰にある教授が、抗がん剤と戦って髪が抜け落ちた体に鞭打ち、最後の授業で何を伝えたかったのか。本書のもととなった「HOW WILL YOU MEASURE YOUR LIFE ?」(HBSに掲載された論文)は、HBS史上最多のダウンロード数を獲得しています。

原題である「HOW WILL YOU MEASURE YOUR LIFE?」と日本語題である「イノベーション・オブ・ライフ」はかなり乖離がありますね。クリステンセン教授といえば「イノベーションのジレンマ」が有名ですから、それと被せたということでしょう。

内容としては原題の「HOW WILL YOU MEASURE YOUR LIFE?」のほうがしっくりきますね。クリステンセン教授の経営論を人生そのものに当てはめ、「どのように生き抜くべきか?」を考えさせられる本です。

衛生要因と動機づけ要因

ここで別の考え方に立つ、二つめの陣営を紹介しよう。これは二要因理論、別名動機づけ理論(モチベーション理論)と呼ばれる考えで、要は誘因理論を逆さにしたものだ。たしかに、報酬を支払えば、あなたの望むことを相手にも望ませることは(何度でも)できる。だが誘因は動機づけとは違う。真の動機づけとは、人に本心から何かをしたいと思わせることだ。この種の動機づけは、好不況に関係なく持続する。

動機づけ理論の分野でおそらく最も明敏な研究者の一人であるフレデリック・ハーズバーグは、この問題にずばり焦点をあてた画期的な論文を『ハーバード・ビジネス・レビュー』に発表した。ビジネス界の読者を想定して書かれたものだが、彼が動機づけについて発見したことは、万人に等しくあてはまる。

ハーズバーグによれば、仕事の満足感が連続的に変化していく―つまり一方の極の非常に満足度の高い状態から、その対極のまったく満足していない状態までが、連続的につながっている―という一般的な前提は、人間の心の働きを正確に表していない。満足と不満足は、実は一つの連続体の対極に位置するのではなく、別々の独立した尺度なのだ。たとえば自分の仕事が好きでもあり、嫌いでもあるという人がいてもおかしくない。

わかりやすく説明しよう。この理論は、衛生要因と動機づけ要因という、二種類の要因を区別する。

仕事には、少しでも欠ければ不満につながる要因がある。これを衛生要因と呼ぶ【衛生状態が悪ければ健康を害するが、衛生状態がよくても健康が増進されるわけではないことからつけられた呼び名】。ステータス、報酬、職の安定、作業条件、企業方針、管理方法などがこれにあたる。たとえば、部下を自分のいいように使う上司や、職務外のことにまで責任をとらせようとする上司がいないことは重要だ。人は衛生要因が満たされないと、不満を感じる。仕事に不満を感じないようにするには、満たされていない衛生要因に働きかけ、改善する必要がある。

個人的にこれはとても面白い記述でした。

仕事を選ぶ際にどんなことを基準とすればよいのか。やりがいなのか職種なのか、将来性なのかサラリーなのか、多くの人がいろいろな主張をしています。クリステンセン教授は、「衛生要因」と「動機づけ要因」という二つのファクターを持ち出し、ほとんどの人は「衛生要因」に引きずられてキャリアを選択していると主張しています。

そして、衛生要因をいくら満たしたとしても、そのキャリアに満足することはなく、仕事を好きになることもないのです。いくら多額の給料がもらえても、安定した職についていても、毎日定時で帰ることができても、仕事を好きになることはないのです。

それらの衛生要因をいくら満たしても、仕事に対する満足度は高まりません。衛生要因を満たすことで得られるのは「仕事に不満がない」状態であり、「仕事に満足している」状態ではないのです。

クリステンセン教授は、本当に満足する仕事をしたいのであれば、衛生要因ではなく動機づけ要因に目を向けるべきだと主張します。

わたしたちが最も陥りやすい間違いの一つは、それさえあれば幸せになれると信じて、職業上の成功を示す、目に見えやすい証に執着することだ。もっと高い報酬。もっと権威のある肩書き。もっと立派なオフィス。

こうしたものは結局のところ、あなたが職業的に「成功した」ことを、友人や家族に示すしるしでしかない。だが仕事の目に見えやすい側面にとらわれたとたん、ありもしない蜃気楼を追いかけた、わたしの何人かの同級生と同じ道をたどる危険にさらされる。今度昇給すればとうとう幸せになれると、あなたは思うかもしれない。だがそれは雲をつかむようなものだ。

動機づけ理論は、ふだん自分に問いかけないような問題について考えよと、わたしたちを諭している。この仕事は、自分にとって意味があるだろうか? 成長する機会を与えてくれるだろうか? 何か新しいことを学べるだろうか? だれかに評価され、何かを成し遂げる機会を与えてくれるだろうか? 責任を任されるだろうか?

―これらがあなたを本当の意味で動機づける要因だ。これを正しく理解すれば、仕事の数値化しやすい側面にそれほど意味を感じなくなるだろう。

数値化できないさまざまな要因。それは成長の機会でかもしれないし、新しいことを学ぶチャンスであるかもしれないし、責任ある仕事を任せてもらうことかもしれません。

そのような数値化できないことこそ動機づけ要因であり、それらをしっかりと手にしていることこそが「成功したキャリア」である、ということですね。

きれいごとに聞こえてしまうかもしれませんが、これが実際に正しいことは自分の経験上も明らかです。それなりの給料をもらっていても、自分が何にも貢献できておらず、かつ責任ある仕事も任せてもらえないときは辛くて辛くて仕方なかったです。

今から考えると、衛生要因はそこそこ満たされてはいるものの、動機づけ要因がまったく満たされていない状況だったのでしょう。

動機づけ要因を満たすためにはどのような働き方をすればいいか、周囲にどう貢献するべきか、一度ゆっくり考えてみてもいいかもしれませんね。

口で言っているだけでは戦略にならない

戦略は―企業戦略であれ人生の戦略であれ―時間や労力、お金をどのように費やすかという、日々の無数の決定をとおして生み出される。あなたは一瞬一瞬の時間の過ごし方や、労力とお金の費やし方に関わる一つひとつの決定をとおして、自分にとって本当に大切なのはこういうことだと、公に宣言しているのだ。人生に明確な目的と戦略をもつことはたしかに大切だが、自分のもてる資源を、戦略にふさわしい方法で投資しない限り、何にもならない。結局のところ、戦略は正しく実行されなければ、ただの善意でしかないのだ。

自分が心から実行したいと思う戦略を、実際に実行しているかどうかを確かめるには、どうすればいいだろう? 自分の資源が流れている場所に、つまり資源配分プロセスに目を配ろう。自分の立てた戦略を支えるような配分がなされていない場合、深刻な問題が起きるおそれがある。たとえば自分は慈善心のある人間だと自負している人は、自分の気にかけている大義や組織に、それだけの時間やお金を費やしているだろうか? 家族が何より大事だと言うなら、ここ一週間の時間の使い方の選択で、家族を最優先しているだろうか? 自分の血と汗と涙をどこに投資するかという決定が、なりたい自分の姿を映し出していなければ、そのような自分になれるはずもない。

とてもシンプルかつ本質的な指摘です。いくら口でかっこいいことを言っていたとしても、そこに資源を投入していなければうまくいくはずがない、というメッセージですね。

「英語ができるようになりたい」という目標を立てたはいいものの、そこに時間も割かず、お金もかけず「全然できるようにならない!」と憤っている人がいますが、それは残念ながら当然の帰結です。ある目的を達成したいのであれば、それを達成するだけのリソースを割き続けなければいけないのです。

自分自身を振り返っても、うまくいってきたモノには大量のリソースを割いてきました。このブログもそうですし、仕事もそうです。ただ時間を割くだけではなく、体力も精神力もお金もだいぶ注ぎ込んできました。それがうまくいくための前提条件ということなのでしょうね。

★参考記事

この世の中色々なハウツーが紹介されていますが、最も有効なのはなんだと思いますでしょうか?

ぼくは、自分の持てるリソースをすべて注ぎ込むことだと考えています。もちろんちゃんと戦略を考え、どのように物事進めていくか、キチンと練り上げることも非常に重要です。しかしながら、最終的にはどのぐらいのリソースを注ぎ込むことができたか、そこに尽きるのです。

家庭内の見えざる手

自分がそばにいて見守っていなくても、正しい選択ができるように子どもを育てたいと、どんな親も思っている。これを最も効果的に行う方法の一つが、適切な家庭文化を築くことだ。家庭文化は、どのように行動すべきかについて、目立たないが強力な指針を家族に与えてくれる。

集団がくり返し問題の解決に取り組むうちに、規範ができあがっていく。家族についても同じだ。家族が何かの問題に初めて直面したときや、何かを家族で行う必要が生じたときには、解決策を見つけなくてはいけない。

ただ好ましくない行いを律するだけではなく、よい行いをほめることも必要だ。家族は何に価値を置くのだろう? 創造性だろうか? 勤勉? 起業家精神? 寛大さ? それとも謙虚さだろうか? 子どもはどんなことをすれば親に「よくやったね」とほめてもらえるかを、理解しているだろうか?

これが、文化のとても強力な側面だ。文化は、自動操縦装置のようなものだ。文化が効果的に機能するには、自動操縦装置を適切にプログラミングする必要があることを、けっして忘れてはいけない。つまり家庭に求める文化を、自ら構築するということだ。家庭生活の早い段階から意識的に構築し、強化していなくても、どのみち文化は生まれるが、あなたの望むようなものにはならない。子どもの怠惰な行動や無礼な行いを何度かでも見逃せば、それを家庭文化にしてしまうプロセスが発動する。また子どもが問題を解決しようと精一杯努力したとき、立派なことをしたねとほめれば、やはりプロセスが発動する。親にとって、つねに一貫した態度をとり、子どもの正しい行いをいつでも励ますのは大変なことだが、文化はこうした日々のやりとりのなかで定められていく。そしていったん文化ができあがれば、それを変えるのは不可能に近い。

これは子育ておよび家庭の文化についての記述ですが、同じことは企業内文化についてもいえます。だんだん企業の規模が大きくなっていくと、自分だけで隅々まで行動を管理することは不可能になっていきます。どんなに有能な人でも、自分ひとりで目が届く範囲には限界がありますし、時間も無限ではない。

そのようなときに重要になってくるのはその企業の「文化」です。どのようなフィロソフィーを持っているのか、クライアントにどのような価値を提供しようとしているのか、 何が自分たちにとってコアとなる価値観なのか。それらが経営層から一般社員まで認識があっている企業は非常に強いです。

リクルートの旧社訓である「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」や、リッツカールトンにおけるクレドなど、企業文化がしっかりと出来上がっている企業は安定感がありますね。

見えざる手である「文化」によって、企業や家庭の行動は規定されます。特に意識せずにいると、いつの間にか人間の弱い部分・あくどい部分が文化として醸成されてしまい、チームが崩壊してしまうのです。「文化は自分たちで作るものである」ということをしっかりと理解したうえで、能動的にそれを作り上げていきたいものですね。

「イノベーション・オブ・ライフ」は人生を考えるときに最適な一冊。

特に面白かったところを中心に「イノベーション・オブ・ライフ」を紹介しました。クリステンセン教授の柔らかな語り口に鮮烈なメッセージが響く良書です。

キャリアや仕事、家族について悩んでいる人はぜひ手に取り、読んでみてはいかがでしょうか。

 

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