東芝が監査法人変更!焦点となっている「ウェスチングハウス」についてまとめた。

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こんにちは、Shin(@Speedque01)です。2017年の4月11日、東芝が会計監査を経ていない決算書を発表したことはみなさんの記憶にも新しいことかと思います。

こちらのニュースに簡潔に流れがまとめられていますね。

headlines.yahoo.co.jp

経営危機に陥っている東芝は4月11日、2度の延期を経て2016年4~12月期の決算を発表しました。しかし、この決算には監査法人の適正意見はつけられておらず、あくまで東芝の判断に基づくものでした。上場企業が会計監査を経ずに決算を発表するというのは異例中の異例です。

東証のルールでは、監査を経ていない決算を発表しても、ただちに上場廃止となるわけではありません。ただ、適正意見のない決算は上場廃止基準に抵触するため、東証が審査を実施することになります。審査の結果、不合格ということになれば、東芝は上場廃止となってしまいますから、同社は何としても審査の前に監査法人からの適正意見を得なければなりません。

しかし、東芝と同社の監査を担当しているPwCあらた監査法人は、米国の原子力企業ウェスチングハウス(WH)の損失額をめぐって見解が対立しており、このままの状態では適正意見が出る見込みはほとんどないといわれています。このため東芝は、別の監査法人に監査を依頼し、そこから適正意見をもらおうとしています。

経営危機に陥った東芝は、延期を重ねながらも何とか決算を発表しました。しかしながら、そこには監査法人の適正意見はつけられていなかったのです。

適正意見についての解説は、下記がわかりやすいです。

www.hp.jicpa.or.jp

  • 無限定適正意見・・・・ 一般に公正妥当と認められる企業会計の基準にしたがって、会社の財務状況を「すべての重要な点において適正に表示している」旨を監査報告書に記載する。
  • 限定付適正意見・・・・ 一部に不適切な事項はあるが、それが財務諸表等全体に対してそれほど重要性がないと考えられる場合には、その不適切な事項を記載して、会社の財務状況は「その事項を除き、すべての重要な点において適正に表示している」と監査報告書に記載する。
  • 不適正意見・・・ 不適切な事項が発見され、それが財務諸表等全体に重要な影響を与える場合には、不適正である理由を記載して、会社の財務状況を「適正に表示していない」と監査報告書に記載する。
  • 意見不表明・・・ 重要な監査手続が実施できず、結果として十分な監査証拠が入手できない場合で、その影響が財務諸表等に対する意見表明ができないほどに重要と判断した場合には、会社の財務状況を「適正に表示しているかどうかについての意見を表明しない」旨及びその理由を監査報告書に記載する。

東芝を担当しているPwCあらた法人が適正意見をつけられない理由としてあげているのが米国の原子力企業「ウェスチングハウス」です。記事の中では「損失額をめぐって見解が対立」との記載がありますが、詳細は不明です。

いったいウェスチングハウスはどのようなことをしていたのか、実際の損失額はどれほどのものになるのか、いくつかのニュースを読んでみました。

ウェスチングハウス・エレクトリック・カンパニーとは

ウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニーは、原子力関連の広範な製品の販売とその関連サービスを行う多国籍原子力関連企業である。核燃料、サービスとメンテナンス、制御と計測、原子炉の設計などを行っている。

旧ウェスティングハウス・エレクトリック(WE)の一部で独立した原子力企業であったが、1997年にWEはCBSを購入し、原子力部門を英国核燃料会社に売却、2006年には東芝に売却され、現在は東芝グループの一部となっている。本社はアメリカ合衆国ペンシルバニア州バトラー郡に所在する。

ウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニー – Wikipedia

ウェスチングハウス・エレクトリック・カンパニーは原子力関連のアメリカ企業であり、2006年に東芝に売却されたとのことです。なぜ東芝はウェスチングハウスを買収したのでしょうか?

bunshun.jp

資金調達力があり、外国企業との交渉にも長けた丸紅は、財務基盤の弱い東芝にとって心強い存在だった。まして当時の丸紅社長は勝俣宣夫。東京電力社長、勝俣恒久の弟である。東電も電力自由化を睨み、原発事業での海外進出を目論んでいた。天下に聞こえた「勝俣兄弟」がついていれば、鬼に金棒。WH買収を巡る入札で三菱重工業と競り合っていた東芝は、三菱重工業の首脳が「考えられない」というレベルにまで値を吊り上げた。

ところが入札が佳境に入った2006年夏、突然、丸紅がディールから降りる。当時、丸紅は経営危機に陥ったダイエーの買収も検討しており、勝俣(弟)が「二兎は追えない」と逃げたのである。

当時、東芝社長だった西田厚聰と原発担当役員だった佐々木則夫は烈火のごとく怒ったが、後の祭り。丸紅の穴を埋めるため米ゼネコンのショー・グループ(現CB&I)を引っ張り込み20%を出資させる。だが用心深くプット・オプション(ショーが「売りたい」と言ったら東芝が買い取らなければならない契約)を設定し、2011年の福島第一原発事故の時にその権利を行使した。原発輸出でタッグを組むはずだった東電も死に体になり、かくて東芝は一人ぼっちになったのである。

総合商社の一角を占める丸紅と日本のエネルギーを牛耳る東京電力のサポートがあり、東芝はウェスチングハウスの買収に踏み切ったということですね。しかしながら、丸紅がディールから降り、東京電力も福島原発事故で青息吐息、東芝は孤立無援となったという話です。

20%をアメリカのゼネコンに出資してもらったものの、プットオプションを設定されてリスクは東芝が丸抱えすることになってしまった、ということです。

ウェスチングハウスが出した巨額損失

そのウェスチングハウスが出した巨額損失とはいったいどのようなものだったのでしょうか。

www3.nhk.or.jp

ウェスチングハウスは、アメリカ南部のジョージア州で2基、サウスカロライナ州で2基の合わせて4基の原発の建設を2008年に受注しました。

子会社のウェスチングハウスがCB&Iストーン・アンド・ウェブスターを買収する前のことですが、両社はこの4基の建設プロジェクトを共同で受注するパートナー企業の関係にありました。

東芝によりますと、2011年3月の東京電力・福島第一原子力発電所の事故のあと、アメリカで原発の安全基準が厳しくなったことを背景に建設のコストが膨らみました。特に、安全基準を満たすために設備や資材の費用が上昇。それにともなって建設の工期が伸びることで人件費も膨らみ、全体の建設コストが受注した時点の想定を大きく上回ったとしています。

工期は当初の計画ではそれぞれ5年程度の見通しでしたが、現在では、原発の運転開始の時期は、4基いずれも1年から3年程度遅れているということです(今の運転開始時期は2019年~2020年の予定)。原発の建設費用は、4基合わせておよそ2兆円で、工事の進ちょくはまだおよそ30%です。

ウェスチングハウスは原発の建設プロジェクトを受注しましたが、福島事故の影響もあって基準が大幅に上がり、それをクリアするためのコストがうなぎのぼりになってしまったとのことです。工期も延び、人件費も上昇、全体の建設コストは4基あわせて2兆円にも及ぶとのこと。

2兆円は、世界で70位付近の規模の国の国家歳入に匹敵します。2016年だと、スロベニアやオマーンの国家歳入レベルですね。
出典:List of countries by government budget – Wikipedia

さらに悪いことは重なります。ウェスチングハウスと一緒に建設を進めていたCB&Iストーン・アンド・ウェブスター社が、コストの負担をめぐって争いだしたのです。その争いを収めるため、ウェスチングハウスはCB&Iストーン・アンド・ウェブスター社を買収します。

東芝によりますと、ウェスチングハウスとCB&Iストーン・アンド・ウェブスターは、建設コストが膨らみ続ける中でコストの負担をめぐって対立していったといいます。

このためさらに工期が遅れる可能性が出てきたことから、ウェスチングハウスは、この対立を収拾させるためにCB&Iストーン・アンド・ウェブスターの買収に踏み切ったとしています。

つまり、東芝の”孫会社”にしたのです。ただ、この時すでにCB&Iストーン・アンド・ウェブスターは、資産が負債を下回る債務超過に陥っていたということで、ウェスチングハウスは、買収にあたって親会社のCB&Iとの間で買収額は「0ドル」とする契約を結びました。

買収によって対立構造が解消されたはずでしたが、ウェスチングハウスはCB&Iストーン・アンド・ウェブスターの親会社であるCB&Iとも対立します。

さらに、買収からおよそ半年、今度はウェスチングハウスとかつての親会社のCB&Iとの間で対立が鮮明になります。

買収にあたって両社はCB&Iストーン・アンド・ウェブスターが建設のために確保している運転資金が11億7400万ドルを下回った場合は、その分はCB&Iが負担するという契約になっていました。この運転資金がいくら残されているかをめぐって両社は対立したのです。

ウェスチングハウスは運転資金がマイナスになるほど採算が悪化していると主張する一方、CB&Iは運転資金は十分に確保できているはずだと正反対の主張をし、訴訟にまで発展しました。

膨らみ続ける建設コストを誰が負担するのかをめぐる対立という構図では、買収前と変わりません。結局は、建設コストの拡大のリスクをどこまで予測していたのか、その発端となった契約方法の選択が正しかったのか、その検証が必要です。

福島事故がなければうまくいっていたのか?

ウェスチングハウス関連のニュースを見ていて感じたのは、「そもそも東芝はこの買収をすべきではなかった」ということです。ウェスチングハウスの買収には、三菱重工業も名乗りをあげていたようです。彼らの見立てでは高くても3,000億円がマックスの購入価格とのことでしたが、実際に東芝が出資した金額は6,600億円にも上るとのことです。

このレベルの買収案件はそうそうあるものではありません。当時はデューデリジェンスもしっかりと実施をされたはずだと思うのですが、どこかでブレーキはかからなかったのでしょうか。福島事故がなく、原発をどんどん建設しようとした当時の空気に呑まれ、実際の技術力を見誤ったのではないかという疑いがぬぐえません。

福島事故は現在の巨額損失の理由のひとつであることは間違いないですが、そもそもの買収時の見込みの甘さが現在の損失に繋がったのではないか、と思いました。

PwCあらた監査法人が適正意見をつけられなかった東芝の決算書の行方はどうなるのでしょう。新たに監査法人をつけて再度決算書作成を実施するのでしょうが、監査法人によってそこまで大きく監査結果が変わるとは到底思えません。

東芝の今後が気になります。

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