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こんにちは、Shin(@Speedque01)です。ぼくはコンサルタントという仕事柄、さまざまなステークホルダーとの板ばさみになることが多いです。
クライアントが当初握ったスコープを大幅に広げようとしてきたり、海外のアナリスト達が、最初は「やる」といっていたのに後になって「やっぱムリだわ」といってきたりなどなど・・・。そういう板挟みが多いんですよね。
そういう状況への処方箋となり得る本を見つけたので、ご紹介します。
タイトルが煽り気味ですが笑、非常に面白い視点から書かれた本でした。著者がExecutive用のMBA(EMBA)に通っていたときの実践的な学びが満載です。
前書きを抜粋してみます。
財務(ファイナンス)や会計(アカウンティング)、統計学等の基礎知識も必須だが、とくに彼らが求めているのは、ざっくりと、「リーダーシップ」「ネゴシエーション」「テクノロジー・マネジメント」「アントレプレナーシップ」「マーケティング」「グローバルビジネス」(とくにアジアビジネス)の6つに大別できる。
これらの科目自体は一般的なMBAのカリキュラムでも見られるものかもしれない。だが、これこそ実際に第一線で働く世界のトップエリートたちがさらに高みを目指すために必須と考え、日々高速で学んでいることなのだ。その意味ではこれらのジャンルの勉強が、いま、成功するのに最も効率がいいといえるのかもしれない。逆にこれらの分野をおさえておかないと、これから支障をきたすともいえるだろう。
いうなればこれらは、これからのビジネスパーソンの「必須の教養」というわけだ。経験豊富な彼らが、経験だけでは物足りず、さらに学びたいと考えるのはなぜなのか。彼らと共に学び、見聞きしたなかでも、とくに日本のビジネスパーソンにとって重要だと思える知識、誰もが目の色を変え、とりわけ熱心に学んでいた考え方、「そこを攻めるから成果が上がるのか」と目から鱗が落ちたような戦略的な問題解決術など、ビジネスパーソンとしての「頭脳」のレベルを大きく上げる学びをここに伝えたい。
今回は、特にリーダーシップについての記載を取り上げてみます。
360度、徹底的に自分を知り尽くす
UCLA-NUSのEMBAのリーダーシップクラスでは、第1回の授業が始まる際、準備として自己評価および周囲の人たち(同僚・後輩・上司など約10人)に以下のようなアンケート(「360度サーベイ」と呼ばれている)を行ってくることが義務づけられていた。
- 他人から尊重されるように行動しているか?
- 自分の興味・関心を越えてチームの利益のために働いているか?
- 共通の使命感を持つことの重要性を主張しているか?
- 自分が大切にしている価値観や信念を話しているか?
- ゴールは達成できるという確信を表明しているか?
- 将来のビジョンを明確に表現しているか?
- 他人をグループの一人ではなく、個人として扱っているか?
- 個人ごとに異なるニーズ、能力、情熱を尊重しているか?
- 教えることやコーチングに多くの時間を費やしているか?
- 課題解決のための新しい方法を提案しているか?
ここでは例として10個ほど挙げたが、もっと多くの質問事項について、自己評価と他者からの評価を5段階評価で行い、それを材料にして第1回目の授業が行われる。
授業では、この結果について科学的に分析した内容が提示され、「自分の認識と周囲の感じ方の違い」、あるいは「一致しているポイント」について教授と一対一で対話をしたり、生徒同士でオープンなディスカッションをする。
これ、自分でもつくって普段からやってみることにします。
自分では「ちゃんとやっている」と思っていても、他人から見ると全然できていないということはよくあります。ネガティブなフィードバックを受けるのは精神的にキツいですが、それでも上司や部下から評価を貰うことは大事ですね。
どの会社でも「評価面談」的なものがありますが、良くて3ヶ月に1回程度ですね。下手すると1年に1回の会社も少なくないでしょう。今の自分がどこまでできているのか、他者からどう評価されているのか、そういうことを理解する機会が年1回しかないというのはあまりよろしくない状況です。
定期的にフィードバックを受け、改善していくシステムは、自分自身で構築する必要があります。
最悪の「板挟み」を切り抜ける知恵を磨く
クラスで学んだ方法論の一つとしては、まず利害関係者の関係性をチャート化する、というやり方があった。さらに、それぞれの利害関係者の属するグループ同士の関係性についても、「どことどこのつながりがどれだけ重要か」と重要度の順序を整理する。 これによりカギとなる利害関係者がわかり、彼らに対するアクションが明確になる(この方法については後程「抵抗勢力を『マトリックス化』して解決する」でも触れる)。
「誰が問題か」「どう攻略すべきか」といったことをロジカルに詰めることが重要だ。もしかすると、トラブルの原因は「自分」かもしれない。そのときの最良の選択肢は「自分を変える」ことかもしれない。
先にも述べたように、自分を理解することは意外と難しいので注意すべきだ。 そのうえで、残り時間までにどう行動すべきかを整理して、どの段階まで来たら誰に報告、あるいは指示を仰がなければいけないのかを決めていく。
本項の例は主に社内の人間関係の話だが、EMBAではさまざまなケースが用意され、そのケースごとに活発なディスカッションが繰り返される。取引先やクライアントとの関係、「自分、クライアント、社内の他部署の担当者」という三者間の問題もある。
そのようなさまざまなケースにおいて、いかにして対立をコントロールし、ベストの落としどころを見つけるのかというトレーニングをいやというほど繰り返すのだ。
板挟み状況って本当に辛いのですが、それを解決しないと前に進みません。 見てみぬフリをするわけにもいきませんしね。
この本では、答えを提示しているわけではありません。それは当然で、板挟みの状況を一度に解決するようなマジックはどこにも存在しないのです。そうではなく、この本で推奨されているのは「徹底的にロジカルに整理し、有効なアクションを取り続けよ」ということ。
人間関係も結局はなんらかの力学によって定義されるもの。なんとなく感情で動いたり、言いたいことを言うだけでは何も変わりません。各メンバーの力学はどうなっているのか、誰を動かせば状況が変わるのか、そのためにはどうすればいいのか、それらを徹底的に考え抜き、アクションの落とすことでしか板挟み状況は解決できないのです。
圧力、返報性、数値化・・・どうやって「人を動かす」か?
われわれが学んだEMBAのクラスでは、他人を動かす有力な方法として、まず、三つのアプローチがあると教えられた。「権力を使った圧力」「相互利益」「道徳」の三つだ。
シンプルでわかりやすいですね。
クライアントも自社のコンサルタントも、人を動かすときには上記のどれかを使っていました。権力を使いまくる人はちょっと・・・という感じがしましたが。
権力
まず、「権力を使った圧力」というのは、文字通り「これをやらなければ、こんなひどい目に遭うぞ」というプレッシャーをかけることだ。
「圧力」と言葉にすると過激だが、自分の立場、役職を利用して「相手を動かす」というのもこれに含まれる。あえて口で言わなくても「私の言うことを聞かなければ、クビにする」「評価を下げる」と脅しているのと同じだからだ。 これは個人としての影響力は持っていないが、役職や立場が影響力を持っているという状態だ。
権力を使って人を動かすのは、短期的には有効です。
例えば、納期があと1ヶ月に迫っているのにプロジェクトの進捗が思わしくないとき、もしかしたら、マネージャはプロジェクトメンバたちに毎日のように深夜残業を強いる必要があります。そんなときは、ある程度上司としての権力を用い、無理やり働かせる場合もあるでしょう。
ただ、長続きしません。
相互利益
次の「相互利益」というのは、端的に言えば「取り引き」のことだ。「ギブ&テイク」と言い換えてもいい。
この「ギブ&テイク」のアプローチは、人に影響を与えるうえでかなり大きな効力を発揮する。 人は「何かをしてもらったら、何かを返さないといけない」と思ってしまう生き物だ。たとえ相手が「知らない人」であっても「嫌いな人」であっても、何らかの恩義を受けると、それと同等(あるいは、それ以上)のものを返さなければいけないと感じてしまう。
また、シカゴ大学のEMBAに行っていた友人のジョージによると、彼が受けた授業では「相手に与えた恩義でさえ、すべて数値化できる」と教わったという。
「私はあなたに恩を30グラムあげるから、あなたは私に20グラムを返してください」という取り引きが成り立つという発想であり、人間関係もすべて数値化・定量化できるという考え方だ。
さすが、幅広い分野で経済学の物差しを振るう「シカゴ学派」の牙城だ。
これを良く使う人は非常に有能だと考えています。
クライアント、部下、上司・・・すべての人にまず自分から貢献することを徹底します。その結果、「彼のためだったらなんでもやってあげよう」と思ってくれる人を増やし、最終的にプロジェクトをスムーズに回すのです。
ぼくももっと時間的&精神的に余裕を持ち、まず自分から他の人に貢献できるようにしていかないといけないなーと感じました。
道徳
相手に影響を与える方法の3つ目は「道徳」だ。これは、相手との信頼関係、共通の価値観などを構築したうえで、相手に行動を起こしてもらうという至極まっとうなアプローチだ。
この関係がすばらしく、効果的であることに疑いの余地はない。もう少し露骨に表現するならば、「相手に好意を抱かせること」に成功すれば、それだけあなたの影響力は上がるという、シンプルな構造だ。
いやらしい話ですが、この力を行使できる人をたくさん増やすことができたらすごいですね。特に自分から何か提供しなくても、「この人がいうなら」「この人のためなら」と思って行動を起こしてくれる人・・・非常に強力な仲間です。
「他人を変える方法」をマスターする
組織変革に取りかかる際、まずやるべきは「強固なコアチーム」をつくることだ。
組織を変革するというのは、そこに属する人たちの意識を変え、ビジネスのやり方を変え、目指すゴールを変え、仕事への関わり方を変え、コミュニケーションの取り方を変えるなど、まさに「変化のオンパレード」を強いる作業だ。
しかし多くの人が知る通り、人は誰でも「変化」を恐れ、嫌うものだ。それゆえ組織を変革しようとすると、激しい抵抗に遭う。つまり「組織を変革する」というミッションは例外なく、とんでもない逆風のなかでスタートすることを覚悟しなければならない。ゼロからの出発どころか、マイナスからのスタートなのだ。
そんな過酷な環境でミッションを遂行するには「信頼できて、ビジョンを共有している結束の固いチーム」が不可欠だ。だからこそ、まずは数人の小グループで構わないので「同じ目標に向かい、一枚岩になれる本物のコアチーム」をつくらなければならない。
組織を変えるための第一ステップとして、まず強固なコアチームをつくることであるというのは、非常に正しいアプローチです。
「何かを変える」というアクションが、スムーズに行くことはほとんどありません。絶対に抵抗勢力が妨害をしてきます。それをまず突破するためには、少人数でもかまわないので同じ意思を共有するチームをつくらなければいけません。
そのコアチームをだんだんと広げていき、既存の抵抗勢力に負けないようにする。それが組織改革のはじめの一歩となります。
その後どうやって進めていくかのプロセスも非常に興味深かった。ぜひ購入して読んでみてください。
抵抗勢力を「マトリックス化」して解決する
人事や組織変革について先進的な発想を持つその企業では、組織変革を実施するに際しては、まず、すべての関係者をリスト化し可視化するという。このときのポイントは「少しでも関係しそうであればリストに入れておく」ことだ。 そして、リストにあるすべての関係者を「変革への影響力×協力度」の4象限マトリックスに当てはめてみる。
「影響力が高く、協力度が低い人」を変革のキーパーソンと位置づけ、コアチームで戦略を練り、アタックするのだ。 たとえ協力度が低い(つまり、反対派の)相手だったとしても、影響力が大きくなければいったんは置いておく。こうやって、少ない人数で効率的か効果的に抵抗勢力にアプローチする。
「反対勢力への対策」も組織変革におけるタスクの一つとして客観的に捉え、システマチックにまとめてしまおうという発想だ。 非常に合理的かつユニークで、現実的なアプローチではないだろうか。
このマトリックス、メチャクチャ面白いですね。
確かに、抵抗勢力であっても、たいして権力を持っていない人は無視してもかまわないそうではなく、権力を持ちつつ変革に反対している人を狙い撃ちすべきという提案。ターゲットがわかりやすくなるので、効率的に変革を進めることができそう。
実践的でオススメ!
実際にEMBAで何が教えられるのか、明確に書いてあって非常に興味深い本でした。グローバルビジネスに関わる人は、一読しておいて損はないです。