
上辺の仕事をするクセがついてしまうと、そこから抜け出すのは大変です。
やっている仕事の目的や、それの進め方について心底理解せずに進める仕事は、すべて”上辺の仕事”となります。
自分でもその上辺感はわかりますし、もちろん上司も一瞬で見抜きます。
わかりやすく例を挙げると、大学のレポートでしょうか。
とりあえず文字数を稼ぐために、本やWebからコピペして作成したレポートは、上辺の仕事の最たるものです。
自分自身理解もしていないし、理解する気もない最悪のアウトプットといっていいでしょう。
そのような上辺の仕事を会社でやってしまうとどうなるか、なれるSEの1巻を引用しつつ見ていきましょう。
いきなりの無茶振り
巻を進めるごとに異常なまでの成長を見せる主人公、桜坂工兵くん。
そんな彼も、はじめての仕事には戸惑いを隠せない様子。
1巻は彼の苦闘、苦悩が非常にリアルで、非常に面白いです。
上司の室見さんから、いきなり無茶振りされてしまった工兵くん。内容は、ゲートウェイルータのコンフィグ入れ替えです。
室見さんにとっては朝飯前の仕事でも、文系私大卒、コンピュータなんてネットサーフィンぐらいしか使わない工兵くんにとっては宇宙語のようにも見えてしまう状況。
ざっと流し読んでみたが、さっぱり意味がつかめなかった。確かに室見の言う通り、この案件の概要らしき記述はある。だが以下のような文章を読んで一体何が分かるというのか。
『貴社既存ルータのEoSLにともなう故障リスク、及びトラフィックの輻輳状況を鑑み、パフォーマンス・コスト両面で最適な代替機器をサイジングし導入する。なお代替機器については弊社実績、及び御社スタンダードのご用件からCisco社機器を選択する。(現行機器はA社製)』
室見は「日本語くらい読めるでしょ」と言ったが、これを日本語と呼ぶのはどうかと思う。今まで普通に暮らしてきて、一度も耳にしたことのない単語ばかりだった。
特に初めての領域で仕事をすると、そもそも単語レベルからわかんねーよ!ということも日常茶飯事だったりします。
それをわからないままにしておくと、いつまでたっても浅い理解のまま、まともなアウトプットが出せるようにはなりません。
少々辛いですが、ひとつひとつの言葉の連関やそもそもの目的、何が分からないのか明確にする等様々な工夫をしながら、地道に進んでいくしかないです。
コピペでうまくいきそう?しかし・・・
苦境に陥った工兵くんですが、ひとつひとつ精緻に考えることはせず、「Cisco、設定例」で機器のコンフィグ例をググり、それを丸写しするという悪手にでました。
もちろん既存の成果物を参考にするのはひとつのやり方として正解ですが、何が書いてあるのかわからないままコピペするのは絶対に避けるべきです。
そんなことをしたら、「なぜこうしたの?」という上司やクライアントからの質問に答えられないですよね。
案の定、室見さんにオコされる工兵くん。
細かなミスはあるだろうが、何せ答えを丸写ししたようなものだ。室見的には予想外の出来だろう。驚くか、憎まれ口をたたいてくるか。どちらにしろ一矢は報いられる。この横暴な先輩に反撃できる。
さぁ、なんといってくる。
・・・・・・。
ほ、褒めたければ褒めてもいいんだからね!
「やりなおし」
―――。
・・・・・・え?
呆然とする工兵に室見はノートPCを突き返してきた。それきり興味を失ったように、自分の作業を始める。
そりゃそうです。
その程度でごまかされるようであれば、もはや上司とは呼べません。
上司はレビュー責任がありますから、部下の成果物についても完璧に理解しているはずです。中途半端なごまかしは通用しない。
そのことがまだ理解しきれていない工兵くん、室見さんに口答えしたところ、室見さんは激オコになります。
「言いたいことがあるなら言ったら?なんで設定例があるのに、わざわざ一から作らなきゃいけないんだとか、余分な個所があるならそこだけ削除させればいいだろうとか」
「・・・・・・・・・」
図星をさされ口ごもる。心がガラス張りになっているようだった。澄んだ湖面を思わせる瞳が、まっすぐに工兵を見つめている。
「確かにそれでも納品用の設定はできあがるわよ。でもね、そうやって作ったコンフィグがもし現場で動かなかったらどうするの?」
「?どういうことですか」
「仕様の伝達ミス、接続機器との相性、急な要件変更。想定外のトラブルなんていくらでも起きるわ。その時、現場で急遽コンフィグを変更しなきゃいけなくなったとして、あんたはどうするの?どこを変更したらいいかわかるの?」
徹底的に理解する、話はそれからだ
簡単にできる仕事なんかそうそうありません。
とはいえ、そこで「こんなのわかるはずねーよ」と放り出したら、そこでぼくたちは終わりです。
どんな難しいことが書いてあったとしても、しっかり調べて頭に汗をかいて考えてみれば、かならず突破口は見えます。
そうしていくうちに、だんだんと”上辺の仕事”から脱却し、本当の意味で仕事をすることができるようになっていきます。
上辺でごまかすと、もちろん他者からの評価も下がりますし、自分でも辛いです。
少々難しくても、ぜひ頭を振り絞って考え、本物の仕事ができるように努力したいものですね。
物事を考えるということについては、下記を参照↓↓