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Outward Matrix

戦略コンサルタントのブログ。コンサルティング業務、英語、戦略策定、採用、育成等について書いています。

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電通についに立ち入り調査。日本社会は変われるか。

社会

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★厳選オススメ記事!

こんにちは、Shin(@Speedque01)です。電通についに司法の手が入りました。

朝日新聞デジタルの記事です。

headlines.yahoo.co.jp

東京労働局と三田労働基準監督署は14日、労働基準法違反の疑いで広告大手、電通の本社(東京都港区)に立ち入り調査に入った。女性新入社員(当時24)が過労自殺し、労災認定されたことを受けた抜き打ちの調査だった。違法な長時間労働が全社的に常態化していた疑いがあるとみて、刑事事件としての立件を視野に調べを進める。

午後1時、黄色の腕章を着けた労働基準監督官ら8人が東京・汐留の本社ビルに入った。長時間労働の調査を専門的に手がける「過重労働撲滅特別対策班」のメンバーが含まれ、労務管理の資料の確認や人事担当者への聞き取りなどをして、勤務時間の管理体制を中心に調べたという。今後も断続的に立ち入りや聞き取りを続ける方針。関西(大阪市)、京都(京都市)、中部(名古屋市)の3支社にも各地の労働局が同日までに調査に入った。「同時期に本社と支社を一斉に調査するのは異例」(厚生労働省の関係者)という。

入社1年目だった高橋まつりさんが昨年末に都内の女子寮で自殺し、三田労基署が先月30日に労災認定した。高橋さんの1カ月(昨年10月9日~11月7日)の時間外労働は約105時間と認定された。遺族側の代理人弁護士によると、電通が労基署に届け出た上限の時間を大幅に超えており、東京労働局は労基法違反にあたるとみている。

電通広報部は「全面的に調査に協力している」とのコメントを出した。(千葉卓朗)

また、日経新聞の記事によると、官房長官からもコメントが出たそうです。

www.nikkei.com

菅義偉官房長官は14日の記者会見で、電通への東京労働局の立ち入り調査について「結果を踏まえ、過重労働防止に厳しく対応する」と述べた。その上で「働きすぎによって尊い命を落とすことがないよう、働く人の立場にたって長時間労働の是正、同一労働同一賃金を実現したい」と話した。

NHKオンラインによると、過重労働撲滅特別対策班、通称「かとく」のメンバーが調査を実施しているとのこと。厚生労働大臣も言及しているようですね。

www3.nhk.or.jp

大手広告会社、電通に去年入社した女性社員が過労のため自殺した問題を受けて、長時間労働の問題を担当する東京労働局の特別対策班が、東京・港区にある電通の本社に抜き打ちの調査に入りました。

電通に去年入社した高橋まつりさん(当時24歳)は、長時間労働による過労のため、去年12月に自殺し、9月、労災と認められました。

これを受けて14日午後1時すぎ、長時間労働の問題を担当する東京労働局の過重労働撲滅特別対策班、通称「かとく」のメンバーなどが、東京・港区にある電通の本社に「臨検監督」という抜き打ちの調査に入りました。
今回の調査は電通の本社だけでなく、全国すべての事業所を対象にしているということで、厚生労働省として異例の対応だということです。

厚生労働省は、社員の勤務実態を調べた上で、労務管理などに問題が見つかれば、再発防止に向けて改めて指導することにしています。

電通は「当社に東京労働局の調査が入っていることは事実です。調査には全面的に協力しています」とコメントしています。

電通では平成3年に、入社2年目の24歳の男性社員が過労のため自殺していて、塩崎厚生労働大臣は12日の衆議院予算委員会で「この企業において再び自殺事案が発生したことは本当に遺憾の至りだ」と述べ、再発防止策を講じるよう電通を指導したことを明らかにしていました。

この事件に対するぼくの私見は、下記の記事で述べています。

今回は電通という超大手企業で起こったからこそ大きく取り上げられていますが、おそらく他にも同じような事象は数限りなくあることでしょう。そして、それらはいつも「過労」「パワハラ」という一言でくくられてしまいます。

若手社員が追い詰められて自分で命を絶つということがある意味「普通」である日本社会、端的に言って異常です。

一生懸命働くことは素晴らしいことです。そのために、プライベートをある程度犠牲にして働くというのも、本人が納得していれば何の問題もないと思います。現にぼくはコンサルティングファームでかなりの時間を仕事に費やしていますが、チャンスをたくさん与えてくれる上司には感謝しています。しかし、その価値観を他の人に押し付けてはいけないのです。

また、なによりも大事なことは、「人の気持ちを考えること」です。明らかに無理なことを「お前の責任だ」と押し付けられ、できなかったことに対して延々と「フィードバック」される。これはもはやいじめの域です。数十分でもきつい経験なのに、それが毎日夜遅くまでずっと続いていたら・・・ぼくだったら耐えられません。

部下を持っている人、チームをリードする人、会社の経営者・・・すべての方に、「働いている社員はコマではない。ひとりひとり繊細な心と多様な価値観を持っている人間である」ということをこれ以上ないぐらい強く認識してもらいたいです。そして、ぼくもそれは絶対に忘れないようにします。

簡単にまとめると、これは単なる労働時間の問題ではなく、個々人の価値観や気持ちを慮ることなく、異常な環境で働き続けた結果引き起こされたことではないか、という推測です。

そして、電通は行き過ぎたところがあるとはいえ、待遇自体は非常に良く、楽しく働いている人も少なくないというのもまた事実といえそうです。

電通は非常に力がある会社で、何かしらの不祥事があったとしてもメディアが声を上げづらく、問題があっても表面化してこなかったという事実はありそうです。それにも関わらず、今回東京労働局と三田労働基準監督署が抜き打ちで監査をしたというのは、日本社会にとって一筋の光明といえるかもしれません。

これは電通だけの問題ではない

電通は非常に大きな会社であるがゆえに今回大きく取り上げられていますが、仕事を苦にした自殺というのは、現在の日本社会では「普通のこと」です。

平成 27 年中における自殺の状況(警察庁)
https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/jisatsu/H27/H27_jisatunojoukyou_01.pdf

こちらの統計資料によると、昨年仕事が原因で自殺した人は2,159人にのぼるということでした。一日あたり、大体6人が仕事を原因として命を絶っているのです。

この統計から、今回の電通の自殺問題のようなことは今この瞬間も日本のどこかで起こっていることがわかります。

もともと仕事というのは、何らかの価値を社会に提供する素晴らしく意義のある活動だとぼくは考えています。そのプロセスの中で、ここまで多くの人が自ら命を絶つという選択をするのは、明らかにおかしいことだといわざるを得ません。

実はぼく自身も似たような経験をしたことがあります。自殺には至らないにせよ、「なんかもう生きるの嫌だな」ぐらいには思っていました。

がんばるのはすばらしいことです。一生懸命ほかの人の期待にこたえよう、自分の目標を達成しようとがんばる姿はとても美しい。でも、それでもどうしようもない、どうしようもできない状況というのはあるのです。

ぼくも、つぶれかけたことがありました。なかなか上司とそりが合わず、何を言っても何を作っても否定される。毎日毎日夜遅くまで働いているのに、誰も気遣ってくれず、しかも自分が価値を出せていない。上司にすべて突き返され、いったい何が悪いのかもわからない。

もしかしたら、それが彼の教育スタイルだったのかもしれません。そのようなやり方で非常に頑健に育った部下もおそらくいたのでしょう。しかし、そのやり方は少なくともぼくにはあいませんでした。だんだんと気力を奪われ、体力も奪われ、"あと一歩"のところまで追い込まれていた気がします。結局そのプロジェクトは途中で出ることになり、その後少し休むことができたので、なんとか回復しましたが・・・。

そういうふうにつぶれそうな状況になると、さらに悪いことにぼくたちは自分を責めてしまうのです。「おれがだめだから・・・」「もっとがんばれば・・・」「もっと頭がよければ・・・」「死んだほうがいいのかな・・・」そういう思考が頭の中をぐるぐるします。ご飯を食べてもおいしくないし、人とも会いたくない。いい天気のはずなのに空は灰色に染まっているように見える。そんな状況になるのです。

そして、今回の事件の当事者の電通社員の方や、そこまでいかずとも少し前のぼくのような状況に陥っている人は少なくないということが、警察庁の統計からわかります。

これは単純に「電通が悪い」「逃げればよかったのに」というように単純化していい問題ではありません。

労働者個々人の考え方、上司となる人たちの指導方法、会社全体としての風土、日本全体の空気、そういうものがすべて悪い方向にシナジーを起こした結果、「自殺」という最悪の結果に収斂していくのだとぼくは考えています。

まずは「仕事で人を追い詰めてはいけない」という当たり前のことを全員が認識すること

なので、このような労働者の自殺問題をすぐに解決するというのは非常に困難なことです。今回電通に立ち入り調査が入ったからといって、すぐに何か変わるわけではないでしょう。

しかしそれでも、今回の立ち入り調査には非常に大きな意義があるのです。

なぜか。今回「電通」という非常に力がある会社にも、司法の手が入る可能性があることが全日本社会に知れ渡った。それにより、他の会社や上司も、今までの考えを少しだけ改めると思うのです。「人を追い詰めすぎたり、パワハラやセクハラをしたりすると、死ぬ可能性があるんだな。そして、そうやって人を殺すと、罪に問われるかもしれないんだな。」という当たり前の考えに至るのです。

この当たり前のことを各会社の経営者層や管理職が認識し、部下たちの考え方や価値観、状況に少しだけでも配慮できるようになったら、それだけで日本社会は変わると思うのです。

だからこそ、今回の立ち入り調査はお茶を濁すことなく、徹底的にやって欲しいと思います。そうすることで、未来の犠牲者を減らすことができるかもしれないのですから。